このページでは子宮頸がん検診・子宮筋腫・子宮内膜症について解説します。
子宮頸がん検診 パピローマウイルス検査
子宮頸癌(しきゅうけいがん)は、子宮の入り口(子宮頸部)にできる癌です。近年、子宮頸癌の大部分は子宮頸部へのヒトパピローマウイルスの持続感染が原因であることが分かっています。主な感染経路は性行為によるとされています。
ヒトパピローマウイルスに感染した場合でも90%は2年以内に自然に治ります。しかし、一部の場合に持続的に感染する場合があり、子宮頸癌の発生に関連すると言われています。またヒトパピローマウイルスには100種類を超えるタイプがあり、その中のいくつかの種類が子宮頸癌の発生と強く関連すると言われています。
このため、子宮頸癌の検診には、従来から行われている細胞診(いわゆる子宮がん検診)と子宮頸部へのヒトパピローマウイルスの検査を組み合わせた方法が有効であるとされています。(WHOホームページ[英文],http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs380/en/)
ヒトパピローマウイルス
100種類以上あるヒトパピローマウイルスですが、子宮頸癌の発生と関連するのは約15種類のタイプ(16,
18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68など)で、その中でも特に16型と18型がハイリスクとして認識されています。16型と18型は、子宮頸癌全体の約70%に関連があるといわれています。
(National cancer institute[英文], http://www.cancer.gov/cancertopics/factsheet/Risk/HPV)
しかし、このようなハイリスク型でも先ほど述べたように、ほとんどの場合には自然に治ります。
ですから、たとえ検査で陽性になった場合でも数年後に陰性となることが多いのです。陽性が続く場合には、細胞診による子宮頸癌検診を併用し子宮頸癌の早期発見を行っていきます(子宮頸癌は早期発見により治る病気です)。
子宮頸がん検診
子宮の入り口を綿棒・ブラシで軽くこすり細胞を採取します。検査の痛みはほとんどなく、短時間(2-3分)で終了します。後に採取した細胞を検査し、異常がないか診断します。結果は約1週間でお伝えすることができます。また、経膣超音波検査も同時に行うことが可能で、子宮筋腫や卵巣のう腫のチェックもすることができます。
子宮筋腫
子宮筋腫とは?
子宮の筋肉の一部(平滑筋)から発生する良性の腫瘍(できもの)です。婦人科の腫瘍の中で最も頻度の高い病気で、成人女性の20-30%にあるといわれています。
子宮の中の発生する場所によって、漿膜下筋腫(子宮の外側にできて子宮を包む膜のしたにできる)、筋層内筋腫(子宮の筋肉の中にできる)、粘膜下筋腫(子宮の内側の粘膜の下にできる)の3つに分類されます。個人差はありますが、漿膜下筋腫→筋層内筋腫→粘膜下筋腫の順に症状が強くなります。
症状は?
子宮筋腫の主な症状は月経困難症と過多月経になります。
①月経困難症(生理痛)
子宮の筋層や内部にある筋腫は月経の妨げになり、腹痛や腰痛の原因となります。
②過多月経(生理の出血が多い)
子宮筋腫により子宮内部の面積が広がりはがれ落ちる子宮内膜の量が多くなることで、生理の時の出血が増えます。生理のたびに少しずつ貧血が進行し、気づいた時には命に関わるくらいの貧血になっていることがありますので注意が必要です。
③ 便秘・排尿困難
非常に大きくなった子宮筋腫により、排便・排尿のトラブルを起こすことがあります。
④ 不妊症
子宮内部に子宮筋腫ができている場合には、妊娠しにくくなることがあります。
治療は?
大切なことは、子宮筋腫は良性の腫瘍であるということです。見つかったからといって、すぐに手術を考えなければいけないということはありません。また、女性ホルモンにより大きくなる腫瘍ですので、閉経期以降では小さくなっていきます。
以前は、子宮が手拳大に大きくなった場合(通常は鶏卵大程度)には手術の適応があるとされていましたが、現在の日本産婦人科学会のガイドラインでは大きさだけで手術の適応を決めるということはなくなっています。
まず上に挙げたような症状(月経困難、過多月経など)に対してお薬で対応していきます。その上で治療に抵抗する場合に手術を考えていきます。
● 薬剤治療
① 鎮痛剤
② 貧血治療(鉄剤)
③ 偽閉経療法
GnRHアゴニストというお薬を使って一時的に閉経したようなホルモンの状態にします。しかし、女性ホルモン欠落症状(いわゆる更年期症状)が強くでる場合があること、また治療を終了した後に筋腫が再度大きくなること、より手術前の一時的な治療として用いられることが多い治療です。
● 手術療法
① 子宮全摘出術
根治療法(完全に治る)になります。卵巣は温存しますので、手術後も女性ホルモンが分泌されます。ただし、以後妊娠の可能性がなくなります。
② 子宮筋腫核出術
子宮筋腫だけを摘出します。妊娠の可能性を残す必要がある場合に行われます。子宮筋腫が再発する可能性があります
子宮内膜症
月経困難症を中心に女性のライフ・スタイルの大きな妨げとなる病気です。しかし、正確な診断は困難な場合もあります。2013年に欧州生殖発生学会(ESHRE)によるガイドラインが発表されました (Hum Reprod. 2014 Mar;29(3):400-12.)。日本においては、日本産婦人科学会による産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2011の中で解説されています。
子宮内膜症とは?
「子宮内膜」というのは名前の通り本来子宮の中にあるべき細胞です。「子宮内膜」は子宮の中を妊娠に適した状態にする働きがあります。個人差はありますが、だいたい1ヶ月前後で新しくなり妊娠しなかった場合には「月経(生理)」として排出されます。
原因ははっきり分かっていませんが、「子宮内膜」が本来あるべき子宮の中でなく、子宮の外に定着してしまうことがあり、子宮の中の「子宮内膜」と同じように月経のサイクルを持って活動してしまいます。このような状態のことを「子宮内膜症」といいます。
通常、子宮の周囲(卵巣、直腸表面、膀胱表面など)に多く認められますが、まれに肺や手術の傷跡に発生することもあります。
2-10%の女性に「子宮内膜症」が存在するとされています(10-20人に1人くらいでしょうか)。
症状は?
月経困難症、骨盤の痛み、性交痛、排便痛 などが主な症状です。
その他にも、月経周期に伴う排便・排尿困難、血尿、排便時出血、肩の痛みがある場合にも「子宮内膜症」が疑われます。
診断は?
子宮内膜症の確定診断は、腹腔鏡手術でお腹の中を直接観察し子宮内膜症の病変を確認することで行われます。しかし、腹腔鏡も手術ですので診断のための負担が大きくなりますので、最初から腹腔鏡手術を選択することは現実的ではありません。このためESHREは経腟超音波検査での診断を勧めています。
また血清マーカー(CA125など)は診断には有用ではないとされていますが、重症な場合に陽性となる場合があるため補助診断として用いられます。
治療は?
ホルモン剤による治療が主になります。
卵巣嚢腫が大きい場合には手術療法も考慮されます。
① 低用量ピル
避妊薬として用いられるお薬ですが、月経困難症状・性交痛などの症状を緩和する作用があります。しかし、長期に使用する場合には血栓症のリスクの増加などの副作用に注意が必要です。
② 黄体ホルモン製剤(ジエノゲスト)
女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)のうち、黄体ホルモンのみ使用する治療です。長期の使用でも血栓症のリスクがなく、また月経困難症状の改善に特に効果があることより、低用量ピルとともに第一選択として用いられます。
③ GnRHアゴニスト
一時的に閉経状態にすることで、子宮内膜症への治療効果を期待します。しかし、卵巣ホルモン欠落症状(いわゆる更年期症状)が強く出る場合があります。現在では、第2選択の治療となっています。